Koichi Mitsuoka

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わたがしが空を飛んでやってくる。

これは京都府の京田辺市という町に滞在していた時に作ったものだ。
京田辺は京都駅から電車で40分くらいのところにある、いわゆるベッドタウンで静かで落ち着いた町だった。

滞在していた大きな一軒家のすぐ裏手には、平野が多いこの地域特有の「天井川」が流れていた。
天井川とは砂の堆積により川床が上昇していき、それによる氾濫を防ぐため周りの堤防を高くするというのを
何百年も繰り返し続けた事により、川床が屋根よりも高いところを流れている、正に天井の川だ。

そこは京田辺の観光名所にもなっていないが、地元の人はよく散歩に使うとても気持ちの良い道で、
僕もこの道を歩くのが好きだった。

そして滞在先の家の横隣には千歳屋という駄菓子屋さんがあり、この京田辺で55年営業し続けている。
暑い屋外での制作の休憩で僕は滞在中毎日アイスやお菓子を買いに行っていた。
お菓子を買うついでにお店をやってるおばあちゃんとおしゃべりするのがなんだかとても良かった。

そんな千歳屋が閉店することになってしまった。
僕は何か千歳屋に関わる作品を作りたいと思った。
そこで千歳屋でずっと使ってきた綿菓子機をおばあちゃんからお借りした。

この綿菓子機をどう使おうか悩んでいたのだが、
晴れた日の朝に天井川を散歩していた時にふとこの作品を思いついた。

千歳屋、天井川、そして滞在させてもらっていたお家。
この3つがたまたま隣同士にあったというのもおもしろかった。

何十年も隣同士にあったけど出会うことのなかったもの達が、たまたまひとつになってできた真新しい風景。
そんなものがこの町で見れたらいいなと思った。























天井川の土手を歩いて来た人がベルを鳴らすと、向いにある自分が滞在していた家の
2階の窓が開き、わたがしが空を飛んでやってくる。
暑い夏の京田辺に浮かび上がるちょっとふしぎな風景。